【体にはがんを押さえ込む免疫力が備わっている】
【免疫療法はがん手術後の生存率を高める】
【きのこにはベータ・グルカンなどの抗腫瘍多糖が含まれている】
【生体防御に大きな役割を果たす腸管免疫】
【メモ:「サプリメントに副作用がない」というのは誤り】
【メモ:ネズミで効いても人間に効くとは限らない】
【概要】
きのこ類に含まれる「ベータ・グルカン」という多糖体が「免疫力を高めてがんを治す物質」として注目されています。ベータ・グルカンは、免疫を担当するマクロファージやリンパ球を刺激して免疫力を高めます。がんが体に残っていても免疫力を高めればがん細胞の増殖を抑えることができ、がんの再発や転移の予防においても有効です。免疫力を高めることは、高齢化社会で今後問題になってくる多重がん(がんが治癒したあとに別の臓器に新たに発生するがん)の発生予防にも効果が期待されています。
ベータ・グルカン関連の薬剤(クレスチンやピシバニールなど)や健康食品(アガリクスやメシマコブなど)は、免疫力を高める目的でがん治療に応用さ� �ています。漢方薬で使われるきのこ由来の生薬(茯苓、猪苓、霊芝、冬虫夏草、など)も免疫力を高めてがんに効くことが報告されています。しかし、これらの薬剤や健康食品に頼る前に、日常的に食品としてきのこ類(椎茸、まいたけ、えのきだけ、なめこ、しめじ、など)を摂取することも大切です。
【体にはがんを押さえ込む免疫力が備わっている】
がん細胞が発生しても、私たちの体はだまって見過ごしているわけではありません。免疫力やいろいろな仕組みを使ってがん細胞を排除しようとします。「免疫」とは異物に対して攻撃を仕掛けて排除しようとする生体防御の要で、異物とは外部から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原菌のみならず、体内に生じたがん細胞も含まれます。
免疫系は様々なタイプの細胞から構成され、体の中では胸腺、脾臓、リンパ節、骨髄、小腸のパイエル板などに免疫細胞が集まって免疫組織を作っています。これらの免疫組織はリンパ管や血管と密接に連携して全身の至る所に網の目のようなネットワークを形成しています。免疫細胞は一般に白血球と呼ばれており、大きく分けて多核白血球(顆粒球)、リンパ球 、マクロファージ(貪食細胞)に分けられ、これらがお互いに連携し役割を分担しながら、病原体やがん細胞を見つけては排除してくれます(図16)。
図16:免疫とは何か
外部から侵入してくる細菌やウイルスなどの病原体や、体の中で発生するがん細胞などの「非自己」 によって、私たちの体(自己)は絶えず攻撃を受けている。自己を保全するため免疫細胞は体の中 をくまなく巡回して非自己(異物やがん細胞)を見つけて排除している。
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リンパ球の中のB細胞は抗体という飛び道具を分泌して相手を攻撃します。T細胞には、B細胞の働きを調整するヘルパーT細胞やサプレッサーT細胞、直接相手を攻撃するキラーT細胞があります。ナチュラルキラー(natural killer)細胞(略してNK細胞)やマクロファージは異物を直接に攻撃する細胞で、腫瘍細胞やウイルス感染細胞を見つけると直ちに攻撃するため、がんに対する第一次防衛機構として、特に発がん過程の初期段階でのがん細胞の排除において重要な役割を果たしています。また、T細胞やマクロファージはサイトカインと呼ばれる蛋白質を作って放出します。サイトカインにはインターフェロン(IFN)や種々のインターロイキン(IL)があり、直接がん細胞を攻撃したり、他の免疫細胞の機能を調節することによってがん細胞との戦いに加わります。
免疫細胞が絶えず体内を監視していて、異常を起こした細胞を見つけて排除する仕組みを免疫監視機構と呼ん� ��います。免疫監視機能が正常であれば、通常はがん細胞が増殖して成長することはありません。がん細胞を見つけて排除する免疫細胞の能力ががんに対する自然治癒力といえるのです。
免疫細胞の働きが弱まるとがんが発生しやすくなります。免疫不全を引き起こすエイズ(AIDS)の患者さんに悪性腫瘍が多いことは良く知られています。免疫機能の低下の原因として最も重要なのは老化によるものであり、そのほか精神的・肉体的なストレスや栄養障害なども重要です。老化とともにがんの発生が増えることや、ストレスががんの発生や進行を促進することも、その原因は免疫力が低下するからです。人間の免疫力は18ー22才くらいをピークにして年令とともに衰え、がん年令の始まりといわれる40才台の免疫力はピーク時の半分ま� �下がり、その後も加齢とともに下降するといわれています。
【免疫療法はがん手術後の生存率を高める】
がん細胞を攻撃する免疫(腫瘍免疫)には特異的免疫と非特異的免疫が区別されます。マクロファージや樹状細胞と呼ばれる細胞が、がん細胞からがん抗原ペプチドと呼ばれる小さな蛋白質を捕足し、その情報がヘルパーT細胞に伝えられ、その情報に従って特定のがんに対する免疫応答が引き起こされるのが特異的免疫です。NK細胞やマクロファージなどががんの種類に関係なく攻撃を仕掛けるようなものを非特異的免疫といいます(図17)。
図17:腫瘍免疫の仕組み(概略)
体内にがんが存在するときには、がん細胞からがん抗原ペプチドと呼ばれる小さな蛋白質が血中に流れ出� ��。このがん抗原ペプチドはマクロファージや樹状細胞(抗原提示細胞とよばれる)に捕足され、その情報がヘルパー細胞に伝えられ、サイトカインの作用を介して、キラーT細胞やB細胞などを活性化する。キラーT細胞は抗原提示細胞の情報に従いがん細胞に近づき、パーフォリンとよばれる細胞毒をがん細胞に放り込み、がん細胞を殺す。マクロファージからのサイトカインはNK細胞も活性化し、非特異的な腫瘍免疫も増強する。このようにがん細胞に立ち向かう免疫細胞が次々に活性化されていきがん細胞への効果的な攻撃が行われる。
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近年、分子免疫学の進歩によりがん細胞に特異的な蛋白質を作り出す遺伝子が発見され、がん抗原をターゲットにしたがんワクチンや遺伝子治療などがん抗原特異的な免疫療法も可能になりつつあります。ベータグルカンや蛋白多糖体や細菌製剤などを使った免疫療法は、NK細胞やマクロファージを活性化する事によってがん抗原非特異的な免疫力を増強する作用が主体ですが、リンパ球からのサイトカインの分泌を刺激することによってがん抗原特異的な免疫力を高める効果も発揮します。
抗原非特異的ながん免疫療法は、単独では進行がんに対して切れ味のよい腫瘍縮小効果が得られないため、有効性に疑問を抱く臨床医が多いのは事実です。しかし、がん治療の効果を高め、再発予防に有効であ ることを示す証拠は多数報告されています。
例えば、胃がん手術後に、抗がん剤(マイトマイシンCとフルオロウラシル)を投与する治療法において、カワラタケ由来の蛋白多糖製剤のクレスチンを併用した場合の効果を比較した臨床試験が報告されています。抗がん剤単独の場合には5年生存率が60.%であったのに対し、抗がん剤にクレスチンを併用すると5年生存率が73%に延長したという結果が報告されています。
【きのこにはベータグルカンなどの抗腫瘍多糖が含まれている】
「免疫力を高めてがんを治す」ような物質を多くの研究者が探してきました。その結果、抗がん活性をもった多糖(抗腫瘍多糖)の存在がきのこなどから発見されました。多糖体というのはブドウ糖のような単糖がいくつも結びついた高分子物質のことで、その結び付きの違いで作用も異なってきます(図18)。抗腫瘍多糖の代表は(1→3)-ベータD-グルカン(以下ベータグルカンと略す)という多糖体で、類似の基本構造を有する多種のベータグルカンが、きのこ類や生薬などから多数みつかっています。
図18:抗腫瘍グルカンの共通構造単位
抗腫瘍活性をもつベータグルカンは、ベータ1,3-結合を主鎖とし6位で分岐する構造を共通してもっている。鎖の長さや分岐の程度(割合)などによって抗腫瘍 活性に違いがある。
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これらの多糖にはマクロファージ・T細胞・NK細胞・補体系などの免疫増強にかかわる種々の免疫細胞を活性化する作用が証明されています。動物実験では、経口投与でベータグルカンが免疫増強作用を示し、ベータグルカンの分子量や構造がその活性に影響することが知られています。腸の粘膜には特殊なリンパ球が存在し、腸管壁での免疫応答(腸管免疫)が全身免疫に影響しています。高分子量のベータグルカンは消化管からは吸収しにくいので、腸管免疫を介した免疫増強作用の可能性が示唆されています(後述)。腸管からの吸収を促進するために分子量を小さくしたり、構造を改変したものなど種々のベータグルカン関連の物質が開発され、免疫増 強作用をもつ機能性食品(健康食品)として使われています。
このようなベータグルカン関連の薬剤や機能性食品は、免疫力を高める目的でがん治療に盛んに応用されています。ベータグルカンによって活性化されたNK細胞やマクロファージなどががん細胞の増殖を抑えるため、がんの再発や転移の予防においても効果が期待できるかもしれません。
ベータグルカンはサルノコシカケ科の仲間に多くふくまれています。生薬の霊芝(サルノコシカケ科のマンネンタケの一種)、猪苓(サルノコシカケ科のチョレイマイタケの菌核)、茯苓(サルノコシカケ科のマツホドの菌核)にも、同様の理由によりがんの予防や治療効果が報告されています。サルノコ シカケ科のきのこはとても硬い木片のようで(サルが腰掛けても大丈夫なぐらい頑丈、ということでサルノコシカケと呼ばれている)、味は苦いので食用には使えず、霊芝、猪苓、茯苓など生薬として漢方薬に使用されています。しかし舞茸は例外であり、サルノコシカケ科ですが、柔らかく、味も香りも良いので、食用として使われています。免疫を活性化する作用のある"サルノコシカケ科"のなかで、唯一、食べられるきのことして、舞茸はがん予防のための食材として期待されています。近年、菌床栽培で広範囲の流通に成功し安く購入できるようになりました。
椎茸(キシメジ科)やスエヒロタケ由来の6分岐(1→3)グルカンであるレンチナンやシゾフィラン� �カワラタケ由来のグルカンを主とするタンパク多糖(クレスチン)は抗悪性腫瘍剤としてすでに臨床で実用化されています。また、アガリクス茸(カワリハラタケ科)に存在するベータグルカンは他の物と構造が異なり、蛋白質が結合していて経口摂取でも強力な抗がん活性を示すことが報告されています。茸の一種であるが樹木からではなくある種の昆虫の幼虫から生える冬虫夏草(Cordyceps sinensis)も強壮剤として利用されています。ただし、アガリクスや冬虫夏草などのキノコによるがん再発予防効果が人間で証明されているわけではありません。高い値段に見合った効果が期待できるかは疑問です。
きのこにはベータグルカン以外にも、種々のヘミセルロース性多糖、ペ クチン様多糖、(1→4)グルカンなどにも抗腫瘍効果が報告されています。さらに、ミネラルや種々のビタミン類やアミノ酸を豊富に含んでおり、しかもカロリーも低く、脂肪がほとんどないこともがん予防のために積極的に摂取してよい根拠となっています。中国では古くからきのこは仙薬としてあつかわれ、少量ずつ毎日とり続けることは、長寿への近道であると考えられています。がん再発予防の基本として、日頃の食生活の中にまいたけ、しいたけ、えのきだけ、なめこ、しめじ、など多種類のきのこ類を取り入れることが大切です。これらのきのこを多く食べている人ががんの発生が少ないとか、動物を使った発がん実験できのこ類のがん予防効果を示す結果が多数報告されています。
なお、マッシュローム(agaricus bisporus)に含まれるヒドラジン化合物に発がん性が指摘されていますが、マッシュロームの変異原性や発がん性を否定した報告も多くあり、通常の摂取量では発がん性を心配する必要はないようです。がんの再発予防に効果がありそうなキノコとして、椎茸、まいたけ、えのきだけ、しめじ、などが適しているようです。
【生体防御に大きな役割を果たす腸管免疫】
マクロファージやリンパ球の表面にはベータグルカンが結合する受容体(レセプター)があって、このレセプターにベータグルカンが結合するとこれらの免疫細胞が活性化されてがんに対する免疫力が高まります。したがって、ベータグルカンが免疫力を高めるためには、体の中に入ってマクロファージやリンパ球を直接刺激することが必要と考えられます。がん治療中の免疫力を高める目的で使用されるピシバニール、レンチナン、シゾフィランといったベータグルカン製剤は注射として投与します。中国では、きのこ由来の生薬から抽出した多糖成分を注射して抗腫瘍免疫を高める治療も行われています。
注射で効果があっても、口から摂取した場合にも効くとは限りません。きのこを食事として口か ら取り入れても効果があるのかどうかが問題になります。ベータグルカンは、糖が鎖のように長くつながった構造をしていますが、その鎖の長さが小さくなると免疫細胞を刺激する活性がなくなります。しかし長い鎖の状態では大きすぎて腸管からの吸収は困難とされています。そこで、消化管粘膜組織に存在する免疫細胞(腸管免疫)を刺激して、その結果全身免疫も活性化されるというメカニズムが指摘されています。
腸管には無数の腸内細菌が生息し、同時に外界からの病原菌や毒素などにさらされているため、このような外界からの侵入者に対抗するため腸管は独自の免疫系を発達させています。小腸の粘膜上皮細胞の間には小腸上皮間Tリンパ球という特殊なリンパ球が存在し、消化管 の粘膜にはリンパ球が集まったリンパ装置が散在しています。リンパ装置は丸い形で中はスポンジのような網目構造をとり、その隙間に免疫を担当するリンパ球などの細胞がぎっしり充満しているものです。
胃の幽門部には比較的大きなリンパ装置が密集しています。十二指腸や小腸には、無数の小さいリンパ装置が粘膜表面直下に延々と並んでおり、特に小腸末端の回腸にあるリンパ装置は大きく広がり、その機能も活発で、パイエル板という名称が与えられています。盲腸の粘膜表面下には、リンパ節と見まちがえるほどの多数のリンパ装置がひしめきあっており、結腸、直腸にかけての大腸にも比較的大きなリンパ装置が並んでいます。
消化管は食事からの栄養物を摂取する器官であり、栄養の吸収の� ��率を高めるため、その管腔面に絨毛というヒダを発達させ、ヒト腸管粘膜の表面積はテニスコート2面分に相当するといわれています。したがって、そこに存在するリンパ球の数も多く、免疫抗体を作るBリンパ球全体の70ー80%は腸のリンパ装置などに駐留していると言われています。つまり、腸は体の中で最大の免疫組織といえます(図18)。
腸管はからだの中とはいえ、外部とも通じているため、様々な刺激を受けています。食べ物を初め、有害な物質や病原菌なども侵入してきます。からだを守る免疫系にとっては最前線なのです。この最前線の免疫細胞を食品成分で直接活性化したり、腸に棲みついている腸内細菌叢を変えることによって、体全体の免疫機能へ影響を変化させたり、強� ��することもできます。
食事による免疫賦活とは、腸管免疫系に適度の刺激を与えて、からだの免疫機能を活性化することにほかなりません。腸管免疫を活発な状態にしていくことは、体全体の免疫力を高めて、がんの予防や治療に有益です。口からの摂取によって免疫賦活作用を示す食品成分は多いようですが、その代表がきのこ類に含まれる多糖類なのです。
図19:キノコに含まれる多糖体ベータグルカンは、腸に存在するリンパ球を刺激して腸管免疫を活性化して全身の免疫力を増強する
【メモ:「サプリメントに副作用がない」というのは誤り】
薬剤が原因で肝臓に障害を発生する病気を「薬物性肝障害」と言います。作用の強い化学薬品はその毒性によって肝機能を障害する場合がありますが、薬品や食品の成分に対して抗体ができてアレルギー機序で肝臓障害を引き起こす場合も多く、作用の弱い薬でも肝障害は発生します。
抗がんサプリメントの代表であるアガリクスの服用によると思われる重篤な肝障害の症例が、医療機関から時々報告されています。軽度の肝機能障害の例を含めると、アガリクスによる肝障害はそれほど稀では無いと言う指摘もあります。
また、免疫を高めることは良いことばかりではありません。免疫システムを活性化する働きがあるのであれば、リンパ球のような免疫細胞の腫瘍、つまりリン� �性白血病や悪性リンパ腫では、悪化させるのではないかという素朴な疑問が起こります。アガリクスやメシマコブの宣伝本の中には、このようなリンパ球の悪性腫瘍にも効果があるような記述が多く載っています。がんのメカニズムも免疫のシステムも複雑なので、リンパ球の悪性腫瘍にアガリクスやメシマコブが効く可能性は否定はできません。しかし、欧米の論文では、悪性リンパ腫のような免疫細胞の腫瘍の場合には、免疫増強作用をもった健康食品は使用すべきでないことが記載されています。
自己免疫疾患を持っていたり、体の中に急性の炎症がある場合には、ベータグルカンなどで免疫細胞の活性を高めると病気を悪化させる場合もあります。体力や免疫力を高める健康食品ががん 治療に盛んに使われるようになってきたのですが、良い面ばかり強調されて、悪い結果が起こる可能性についてはほとんど言及されていません。「健康食品(サプリメント)は副作用がない」というのは間違いで、服用中に体調がおかしくなったら、サプリメントが原因である可能性も頭に入れておく必要があります。
【メモ:ネズミで効いても人間に効くとは限らない】
キノコ由来のサプリメントの抗がん作用の宣伝では、ネズミの実験が引用されています。ネズミにがんを植え付けて、ある健康食品を食べさせたところ、がんの増殖が抑えられたり延命効果があったという実験結果です。しかし、ネズミで効いたからと言って、ヒトでも期待できる効果であるという保証はありません。
実験で使用するネズミ(マウスやラット)は遺伝的に同じ「系統」を使います。ネズミの系統には多数あり、その中には免疫学的にも性質の異なるものが多く知られています。あるネズミの系統を使って、ある健康食品で免疫力が上がっても、別の系統のネズミを使えば効果が現れないこともあります。どの系統のネズミを用いるかによって実験結果が逆になる場合もあります。口から取 り入れた物質の吸収や代謝が、人間とネズミではかなり異なる場合もあるので、ネズミで効いても人間には全く効かない場合もあります。
もう一つ、ネズミを使った実験で気になるのは、エサが「必要最低限」の栄養素を配合した飼料を使用していることです。これは、実験結果を均一にするために必要ですが、抗腫瘍効果を際立たせる作用もあるのです。例えば、食物繊維の抗腫瘍効果を検討するときに、食物繊維が普通に含まれているエサを基礎飼料にすれば効果は出にくくなります。
つまり、ネズミの実験とは、ある特殊な遺伝傾向(体質)や免疫システムをもったヒトに、必要最小限の栄養素だけを含む制限された食事をしている状況で検討しているのと同じなのです。いろんな食品成分を取っていて、多様な体質や免 疫力をもったヒトには必ずしも当てはまらないことも多いのです。
キノコのベータグルカンを含むサプリメントも、免疫増強作用などの多少の健康作用はあるのですが、ネズミの実験のような「がんが消える」という効果はまず期待できません。
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