Q & A
◆ 病気のご家族を持つ方の悩み
◇ 病気のお友達を持つ方の悩み
○ 診断、治療、予防法について
△ 病気とのつきあい方についての悩み
$ その他
◆ 父が躁うつ病になり困っています
◇ 友人から「精神科にかかっている」と助けを求められました
◆ 夫が躁状態で浮気して困っています
◆ 夫が躁うつ病で再発を繰り返しています
◆ 躁うつ病の息子が病院から友人・知人に手紙を出すのが心配です
○ 非定型精神病と診断されました。躁病ではないのでしょうか?
◆ 躁うつ病の義妹に取り返しのつかないことを言ってしまいました
◆ 母が不治の病にかかった思いこみ病院に行こうとしません
◆ 母が3年以上うつ状態のままです。このまま治らないのでしょうか?
○ 認知療法を受けたいのですが…
◆ 子供が躁うつ病を発症するのを予防する方法はありませんか?
○ どうやって医師や病院を選んだらよいのでしょうか?
○ 電気けいれん療法について教えていただきたいのですが…?
○ 気分変調症は性格の問題と言われましたが本当でしょうか?
◇ うつ病の友人にどうアドバイスしたら良いでしょうか?
○ 母が膠原病(SLE)から躁病となりました。今後が心配です
◆ 母がまた、自殺未遂をしました。家族は皆疲れ果てています…
◆ 躁病の伯父が借金を作って困っています
◇ 部活の後輩が躁状態でセクハラをして困っています
◆ 躁状態で入院中の弟が退院したがって困っています
◆ どうやって躁状態の母を病院に連れて行ったらよいかわかりません
○ 躁状態では記憶力が悪くなるのでしょうか?
○ 夫のうつ病が良くならず、むしろ悪くなっています
○◆ 母のうつ病が遺伝しているかどうかを調べる検査を受けたいのですが…
◇ 彼女がうつ病になってしまいました
○ なかなか病気が治りません。大学病院にかわった方が良いのでしょうか
△ 躁うつ病と両立できる仕事はあるのでしょうか
◆ 父の躁状態で家族が大変なことになっています
$ 主治医が通院医療費公費負担制度を申請させてくれないのですが…
$ 是非研究に協力したいのですが余計なお世話でしょうか?
○ うつ状態がなかなか治りません。今の薬で良いのでしょうか?
◆ 躁うつ病はどのように回復していくものなのでしょうか?
○ パニック発作を伴う双極性障害の治療について
$ 躁うつ病の罹患経験を活かして医学部を目指しているのですが…
$ 「カルシウムが足りないとイライラする」というのは嘘と聞きましたが…
○ 気分安定薬3種を服用していますが波が止まりません。他に治療法は?
$ 「躁うつ病のホームページ」を立ち上げたきっかけは何ですか?
$ 「うつ病」の生物学的な原因は何ですか?
○ 「うつ状態」がなかなか改善せず悩んでいます
○ 13種類の薬をのんでいるのですが…
○ 主治医にリチウムから非定型抗精神病薬への変更を勧められたのですが…
○ 抗うつ薬誘発性躁病というのがあるのでしょうか?
○ リチウムは寝る前にまとめて服用しても良いのでしょうか
○ 双極性うつ病の新薬開発は進んでいるのでしょうか
○ 光トポグラフィーで双極性障害とうつ病が鑑別できるのでしょうか?
○ うつ病はテストステロンの低下によるというのは本当でしょうか?
○ 前大臣が軽い躁状態で入院したと報道されていますが…
父が躁うつ病になり困っています
私の父が、躁状態と診断されました。これまでも何回か躁状態にはなりましたが、家族が気づきだいたい初期の段階で病院へ行き、それほど ひどくなりませんでした。しかし、今回はいろいろなストレスが重なったこともあり、少し激しいようです。父は 現在69才ですが、まだ仕事をしています。
Q1) 父は69歳ですが、このままずっと リーマスを飲みつづけなければならないのでしょうか?
躁うつ病は70歳、80歳になってもやはり再発を繰り返す病気です。ですから原則としては予防療法を一生続けると考えるのが普通だと思います。
ただ、仕事を引退すれば、再発してもそれで人生を棒に振るという訳ではなくなるでしょうから、仕事を引退したら、予防療法を中止して、再発したら早めに治す、という選択もあり得ます。
Q2) 躁状態がひどくなって入院すると、病院でふらふらする位強い薬を調合されるようなのですが、大丈夫なのでしょうか。
ひどい精神症状で、放置したら本人の名誉、お金、人間関係などを損なう危険があるのなら、ふらつく位の薬を飲むことになるのは仕方ないと思います。また、頭脳明晰で意欲も満々な躁状態の方に、入院していなさいと言ってもとても納得できるものではありませんから、ある程度鎮静効果のある薬を飲んでいただく方はご本人にとっても苦しみが少ないと思います。
Q3) 父の通っている病院では脳内リチウム濃度の検査をしていないようですが、どこかこの検査をしている病院はありませんか?
脳内リチウム濃度の検査は、今は日本で行っている病院はありません。
これまでの研究で、必ずしも脳内濃度を測定する必要は無いことが分かりましたので、測定する必要も特にありません。
具体的には、躁状態では、多少手が振るえるくらい飲めば、脳内濃度は十分な量に達しますので、必ず効果が得られます
また、予防効果がないのは脳内濃度が低いせいではないことが分かりましたので、きかなければ他の薬を使うしかありません。
Q4) 父に聞くと、最近あまりリチウム濃度の検査をしていないようですが、このままで良いのでしょうか?
血清リチウム濃度は、半年に1回位の定期的な検査に加えて、副作用が強く出た時、腎臓が悪くなった時、脱水症状などがある時、リチウム濃度に影響を与える他の薬を併用した時などに測れば結構です。
とは言え、私自身もついつい忙しさにかまけて測り損ねてしまうことが多いのです。(正直なところ、20〜30人の患者さんが並んでいる時に、検査をオーダーするのは、たとえ数分の手間でもかなり心理的にハードルが高いのです。)
前回の測定から半年以上たってしまっていたら、「それそろ測らなくても良いですか?」ときいてみたら如何でしょうか。
Q5) できれば、薬を飲まずに検査で再発を防げないものでしょうか?
現状では、それは無理です。躁うつ病の経過を調べる検査は現在のところありません。
肝臓のように、GOTが高くなってきたから気をつけましょう、というような具合に早めに診断できるようになると良いのですが。
Q6) リチウムを長く飲み続けると副作用が心配です。
リチウムは、確かに長期の服用で腎臓が悪くなるという意見もありますが、これは中毒を繰り返した場合ですから、中毒にならないように注意していれば大丈夫です。
Q7) 漢方で治せないでしょうか?
中国では、軽いうつ状態などに対しては漢方治療を行うこともあります。しかし、躁うつ病に対しては、中国でもリチウムが使われているのです。漢方の教科書にも、「躁うつ病には漢方は無効」とはっきり書いてあります。
Q7) 父は夜眠れる薬といって 4つぐらいの薬を飲んでいます。リーマスだけでは、いけないのでしょうか。
これについては、私もまだ分かりません。
寝る前だけで4種類ということは、おそらくいわゆる睡眠薬の他にも抗精神病薬などが含まれているのかも知れませんね。ひどい不眠であれば、私も躁状態でなくても抗精神病薬を勧めることはあります。不眠が続くと躁病になりやすいので、不眠をコントロールするのは躁病再発予防のためにはとても重要です。(葬式の後に躁病になる方が多いのは、単なるストレスと言うよりも葬式では眠る暇がないことが多いためだとも言われています。) 不眠がひどければ、薬の種類が増えることはあります。
予防療法に関しては、理論的にはリチウムだけで良いはずですし、私が最初から受け持っている患者さんでしたら、ほとんどリチウムだけ、あるいはそれにロヒプノールなどの睡眠薬1種を不眠時に使ってもらう程度にしています。しかし、精神科医の中にも色々な意見を持っている先生がおられまして、躁うつ病の長期予防療法に抗精神病薬(セレネース、ヒルナミンなど)を使う先生も多いようです。
では、理論的に必要ないならやめればよいかというと、そう簡単でもないようでして、私自身、この薬は必要ないからやめましょうと患者さんに勧めて、それまで服用していた抗精神病薬を中止していただいたところ、その方が1カ月位で再発してしまって、申し訳ありませんでした・・・と苦い思いをしたことがあります。こうした薬が実は予防にある程度有効なのか、あるいは急に中断することが再発を起きやすくするのか、あるいは偶然か、それはまだ分かりません。
医学では、本当はまだわからないことだらけなのです。
実際には、主治医によく相談することでしょう。紹介状なしに私が1回診察させていただいても、主治医の先生がなぜその薬を処方しているのかは分かりませんので、とにかくまず主治医によく説明してもらうことです。医者はなかなか時間が無いので、黙っている患者さんにはなかなか十分説明しない場合もあるかも知れません。この薬は何故必要なのですかと尋ねて、十分説明を受けた上、4種類の薬を続けるべきか減らすべきか相談してみては如何でしょうか。
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友人から「精神科にかかっている」と助けを求められた
友人から、「最近、体調が良くなく憂鬱なときが多く困っている。精神科医に診てもらい、診断名は、 自律神経失調症・神経性鬱症と言われた。毎日、薬漬けでこれから先のことを考えると 今のままでは良くないと思う。他に、なにかいいものが無いものか?」と相談されました。
Q1)友人は医者から「自律神経失調症・神経性鬱症」と言われたそうです。躁うつ病と友人の病気 自律神経失調症・神経性鬱症と同じなのでしょうか?
いずれも私自身は使わない病名ですので、その先生がどういう意味でこれらの病名を使っているかはわかりません。精神科では医者によって使う病名が違ったり、患者さんには(医者が使っている病名でなく)わかりやすい、あるいは不安を与えない病名を伝えることもあります。ただ、一般には躁うつ病の方にこれらの病名を伝えることは考えにくく、躁うつ病というわけではないのだろうと思います。
病名そのものというよりは、やはり直接主治医の先生にどのような経過をたどる病気か、どう治療したら良いか、周りの者はどう対処したらよいのか、どう過ごしたら良いのか、などを尋ねると良いと思います。
Q2)友人は、薬漬けになっている、と悩んでいるようです。治るまで、薬づけなのでしょうか?
薬づけという言葉はどういう意味なのでしょうか? ここには「自分の意志でなく、無理矢理飲まされている」という意味が含まれているように思えます。なぜ自分の意志ではないのでしょうか。医者の説明に納得していないのでしょうか? まずその辺をはっきりして欲しいと思います。自分が納得して必要だと思って飲めば、薬漬けとは思わないはずです。
ひょっとするとそのお友達は、自分が病気になってしまった事を受け入れられず、否認しようとし、それがそのような発言になっているのかも知れません。あるいは、うつ状態の時には何事も悪い方にしか考えられませんから、理屈では必要と分かっていても悪い方にしか考えられない(「薬漬けだ」)のかも知れません。
その場合は、友人として冷静な判断を伝えたら良いと思います。本人が困っていて、医者が必要と判断していて、ひどい副作用も無いのなら、飲んでも良いのではないか、高血圧で薬を飲むのと何ら変わりないじゃないか、と。
Q3)どうしたら治るのでしょうか? ストレス原因を見つけて排除すれば良いのでしょうか。
それはその方がどのような病気なのかによりますのでわかりません。一般論として、うつ病はストレスの原因を排除するだけでは治りません。自然治癒力を越えた状態だからこそ休日に休んだくらいではなかなか治らず長引いて医者に助けを求めに行ったのでしょう。ストレスの対処法を考えるのは今の状態が治ってからで良いと思います。
一般論として、精神疾患を持つご友人にすべきことは、その友人に対して変わらぬ態度で接し、その人間性を認め、病気を抱えていることを含めて受け入れ、治療を受けたり休養を取ることに協力することなどだろうと思います。
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夫が躁状態で浮気して困っています
夫はこれまで何度か躁状態になったことがあります。最近夫が水商売の女性と浮気をして、家族を捨てるとまで言い出していますが、これは躁状態のせいなのでしょうか? もし躁状態だとしたら、精神科受診を勧めたいのですが、嫉妬と取られてしまい、勧めても無視されそうです。(主人は、普段は決して浮気をしません・・・とは言いきれませんが、したとしても、私に気づかれるようなことはしません。)
Q1) 夫の浮気は躁状態のせいでしょうか。本人は、自分は過去も躁病だったことはないし今も病気じゃないと言いますが、最近は4時間しか寝ていないし、やたらと部屋の模様替えをしたりします。また、普段吸わない珍しい銘柄のタバコばかり吸います。でも、金遣いは荒くなっているとはいえ、以前の時みたいに大きな買い物(別荘、スポーツカーなど)はしていませんし、まじめに仕事に取り組むときもあります。また、普段は言いもしない「一期一会」という言葉を好んで使っています。
やはり躁状態のようですね。別荘やスポーツカーをどんどん買うという前回の躁状態がひどすぎただけで、今回も十分躁状態です。「一期一会」というのもいかにも躁病の方らしい感じがしますし、私の患者さんでも躁状態になると同じようなことをおっしゃる方がいました。浮気も躁状態のせいだろうと思います。
Q2) 躁状態ではなく、性格が全く変わってしまったのではないでしょうか? 些細なことですごく怒る、人前で私をどなったり無視するなど子供じみた態度をとることもあり、私から見ると、以前とは別人になったように見えます。元々は穏やかでやさしい人だったのですが・・・。
これは性格ではなく、やはり躁状態だと思います。躁状態は、治療しないと1年くらい続くこともあり得ます。治療していないために躁状態が治っていないだけで、性格とは違います。
Q3) しかし、躁状態だから治療を受けなさいと言うと、「おまえは病気だと言うが、それは嫉妬しているだけだ」「仕事の邪魔をするな」などと言います。どうやって病院に連れていったらよいでしょうか?
大変難しい問題ですね。まず第一は、何でも良いから本人が困っていることを探すことです。「浮気を女房に止められていらいらする」「眠らないで仕事をしているとさすがに気が張りすぎてちょっと肩が凝る」でも何でも良いから、とにかく受診のきっかけになることを探して、「いらいらするなら、以前見てもらった先生のところへ行きましょうよ」と説得してみて下さい。しかし、これは難しいかも知れませんね。
次の手段は、ご主人のご両親がご主人のことを病気と気づいているようなら、協力してもらいましょう。ここは一つ、ご両親に一肌脱いでもらい、「お前は×子さんに迷惑ばかりかけているじゃないか。病気だぞ。病院へ行きなさい」と言ってもらうよう頼んでみて下さい。そうすれば、ご本人は「病気じゃないから行く必要はない」と言うかも知れませんが、そうしたらあなたは「それなら精神科の先生に病気じゃないとお墨付きをもらえば良いじゃない?」と受診を勧めてみてはどうでしょうか。
もう一つの手段は、ご主人が会社で一番信頼している上司に頼んで、病院への受診を指示してもらうことです。病院に行って診断書をもらってこないと出社してはだめだ、等はっきりと指示してもらう方が良いでしょう。躁状態の方でも、社長、部長など、権威ある上司の指示であれば従ってくれることが多いようです。
Q4) 小説で、ミトコンドリアは、母親のものしか子供には伝わらないということを読んだことがあります。先生のいうミトコンドリア遺伝子の異常というものは父親からも遺伝するものなのでしょうか。
ミトコンドリア遺伝子の件は、まだ学会でも通説になったわけではなく、まだ証明されたとは言えません。ですから、今のところ無視していただいて結構ですし、少なくとも、はっきり「異常」と言えるものは何も見つかっていません。(確かに私の学会発表がそういうタイトルになっていますが、これは知らないうちに主催者側からこういうタイトルをつけられてしまっていたのです。今思えばこのタイトルはちゃんと変えてもらうべきでした。) もう少しはっきりしたことが言えるようになり、その対策が分かってきたら、皆様にお知らせしたいと思います。